2012 世界選手権U23

レース展開に関してはシクロワイアードの記事や国際映像をご覧になった方も多いかとも思いますが、自分がどのように考えてレースを走ったのか、またレース中に起きたことを伝えられればと思います!



コースマップ

今年は2月のアジア選手権以降、今回の世界選手権に向けて高いモチベーションを持ってヨーロッパでのレースを走って来ました。


いつものレース同様、レース前日は、炭水化物中心の食事で身体にエネルギーを蓄える。
食後にミーティング。日本チームが掲げた目標は自分の目標は20位以内。そして来年の世界選手権に繋がる走りをすること。
その後選手4人だけミーティングを行い、各自がどんなレースを展開をしていくのか言い合い、各個人のレースでの考え方を皆で共有した。


自分には2つのプランがあった。1つ目は集団で脚を温存し、勝負の掛かる場面で真っ向勝負を勝ち抜き、前のグループに残る。2つ目は序盤から8名前後で逃げて、後ろから本命選手の乗った追走グループと合流しそこから勝負する。
日本チームは4人、他国に比べて人数的にも組織力はあるとは言えなので、自分のイメージとしては2つ目のプランを遂行するつもりだった。監督に「調子も良いので明日は先手を打って逃げ続け、前で本命グループを待ちます。」と伝えた。


レース当日の朝、やはり外は雨が降っていて、路面も濡れていて気温も低かった。
いつも通り準備をして、いつも通りサインをしてスタート地点に並び、浅田さんに羽織っていた長袖のジャージを渡して「行ってきます!」と言ってスタートした。

さっそく作戦を遂行する為に集団前方に上がっていく。もちろんスタートからアタックは掛かっているが自分のペースを保ち、徐々にポジションを上げた。

集団からすぐ抜け出せる位置で様子を伺っていると、前に幅自転車一台分のスペースが見えたのでアタック。するとスウェーデンとオーストラリアの選手が追いついてきて3人になった、でも逃げ続けるにはあと5人は欲しいところ。ただ少しずつ風が強くなっていくのを感じて、「もうこのまま行きまーす!」と言って心を決めてしまった。
自分はレースのアタックのタイミングが早いか遅いか、距離では判断出来ないと思っている。それよりも逃げグループの人数やコース、風等の要因が重要なポイントと思う。今回も風が強くなって大集団が不利な状況になれば、早い段階で後ろから抜け出しがあるはずだと思った。



逃げている時のペースは遅くはないものの、決して速くもないペース。なにしろ逃げることに力を使っては本末転倒なので吸収された後のことを考え極力省エネで走りました。具体的には、登りはゆっくり下りと平坦でペースを落とし過ぎないように心掛けていきました。

3人の中で逃げることに対して一番モチーベーションが高そうなのはオーストラリア人だった。登りのペースが辛いので、フランス語で「もっとゆっくり行こうぜ?先は長いし、こっちが緩めれば集団も緩めるから」と伝えるが、でも「フランス語がわからないから英語で話してくれ」と言われた。



登りは自分が引く。「僕は君らに比べて身体が小さいから下りは頼むよ」と伝え、下りはオージーの強力な引きに任せながら、お互いに後続とのタイム差を確認しながら淡々と走る。
ちなみにオーストラリアの選手はAIS所属の選手で機材は全てグリーンエッジのものと同じだった。実質AISはグリーンエッジのサテライトのようなチームだと思う。確かに強かった。



世界選手権は、観客の数も応援も凄かった。カウベルグで日本人も何人も確認し、日本の国旗を見て力が湧いてくる。他の観客もトモヒローと騒いで応援してくれてるのが耳に入った時は嬉しかった。横をカメラバイクももちろん走っていて、補給食のゴミを落とさないように気をつけたりした。




レース前半には固形物の補給食を、中盤からはメイタンCCを取りながら走っていった。

ラスト4周目に入る時点で後ろから追撃グループ8人追いついてきた。この展開待っていたのでここからエンジンを吹かしていく。集団と差を付けるために勝負を掛けてハイペースのローテーションを繰り返す。半周後カウベルグの登りに差し掛かり全開で踏みまくった。登り切って「千切れなくてよかった」と思ったのもつかの間。後ろを確認したらカザフスタンが猛追していて、瞬く間にその後集団に飲み込まれてしまった。

これがラスト3周に入るところだったので、正直精神的にかなりショックだった。なにせここまで130km以上逃げ続けてきたのが水の泡になってしまったのだから。

ここからは集団の中で落ち着いて最後の勝負で頑張るのみだ。そう気持ちを切り替えることに集中する。調子の良いエイちゃん(平井選手)に「木下、脚残ってるか?」と聞かれ、「はい、まだ大丈夫ですよ!」と伝えた。でもその数分後脚が攣ってきた。気持ちではまだイケるはずなのに畜生!と思った。

集団の中で少し休みたいと思ったけれど、ペースが落ちないので脚がどんどんきつくなっていく。そして集団の雰囲気も緊張度が増してきて、至る所で落車が起きている状況だった。横に居たのベルギー人がバランスを崩し、左半分の選手が全て吹っ飛んでいったりした・・・。

ラスト3周のカウベルグを登る。脚は全て攣ったがなんとか強制起動で集団で踏み切った。これも応援が凄いからか?あまり痛みを感じなかった。それ以降は脚の筋肉のマッサージを試みるものの回復せず、徐々にポジションを下げてしまい、裏のゆるい登りの横風区間でひらひらしてしまいノックアウト。

その直後の補給地点で前の集団で大落車が見えた。道端に自国の選手を助けていたノルウェー人マッサーが立ちはだかり、フルブレーキも間に合わずその人に突っ込んだ。どこに立ってんだ?と思いつつ、もう千切れた後なので冷静にホイールのチェックをして、完走目指して走りだした。

しかしご存知の通り、最後まで走り切ったものタイムアウトという結果でレースを終えました。


反省点はやはり3人で逃げて無駄に脚を使ってしまったことでしょうか。しかし、こればかりはレース展開だからわからないし、後悔するべきことでも無い気もします。まず強くなって中盤あの8人のグループが追いついてきた時、その逃げが運良く決まれば良かっただけのことでもあるかとも思える。
もう一つは脚が攣ったこと。おそらくレースまでの数日間の水分補給にミスがあったのだと感じています。


必ず次に繋げます。もう一度、来シーズンに向けて準備をしようと思います。
応援ありがとうございました。


木下智裕